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Channel: 不思議空間「遠野」 -「遠野物語」をwebせよ!-
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「現代遠野物語」 第百十二話(白装束の女)

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大橋鉱山がまだ盛んであった頃、宮守の男が大橋鉱山で働いていた。ある日、急用が出来たので、宮守の実家に帰らねばなくなったと云う。仕事を終え、社宅に戻って準備を調え、大橋を出たのが夜の10時過ぎ。歩いて仙人峠を越えて、軽便鉄道駅を目指して歩き始めたのだと。夜中の12時を回った頃、峠の上の方にガサガサッと、落葉を踏みながら下って来る足音が聞こえたそうな。見ると、白装束の人影がそこにあったと。男は草むらに身を隠して、その人影を見たのだと。白装束の人影は女であり、髪を振り乱して、額には手鏡を付け、口にはツゲ櫛を咥えていたそうだ。初めは恐ろしくて動けなかったが、その後慌てて道では無い藪を下り、気付いたら身体が傷だらけになったまま足ヶ瀬駅に辿り着いていたという事である。

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