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Channel: 不思議空間「遠野」 -「遠野物語」をwebせよ!-
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鉄の蛇(日高見とアラハバキ)其の十五

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鹿島神宮の社殿は北向きに建てられ、何故か神坐は東向きとなっている。その理由は定かで無いとされながら、出雲大社に似た様な造りであると云われている。その鹿島の語源に甕島説があり、甕山を起こりとする香山(かしま)が鹿島に代わったというものだ。また神島という神の鎮まる島という説もある。「常陸国風土記」には、こう記されている。

「高天の原より降り来し大神のみ名を、香島の天の大神と偁ふ。天にては則ち、日の香島の宮と號け、地にては則ち、豊香島の宮と名づく。」

ただ「香島」は「かぐしま」と呼んでいたともされている説があるのだが、そこで思い出すのが鹿児島である。その鹿児島に聳える霧島山を天孫降臨の地としている事から、この鹿島の地との重複性がある。その霧島山の麓に鎮座するのが鹿児島神宮で、鹿島神宮と同じ北向きであると云うが、この共通点はなんであろうか。北向きとして考えた場合、つまり鹿児島神宮の背後には霧島山では無く、桜島に向けて参拝するという事にもなる。桜島は古代に鹿児島とも呼ばれた説がある事から、本来は桜島の神を祀る神社であった可能性があるかもしれない。鹿児島は隼人の本拠地でもあり、その隼人の信仰する地主神が桜島に祀られ、その神が伊勢神宮にも祀られている可能性はあるのだろうか。だがこれ以上の鹿児島神宮の詮索は、別の機会にする事にしよう。

鹿島神宮は北向き社殿で神坐は東向きであると書いたが、東は海である事から神坐の武甕槌は海を睨んでいる形となる。北上川の支流であり、早池峯を水源とする猿ヶ石川の下流に、坂上田村麻呂が猿ヶ石川を交通路として移動する蝦夷を睨む形にして兜跋毘沙門天立像を祀ったとされているのに近いのでは無かろうか。鹿島の御神体は大甕であるというが、武甕槌も甕の字があるという事から、武甕槌の御神体とも云われるが、武甕槌はいつしか甕を外され建御雷神となった。しかし甕も雷も蛇神のイメージにはあるが、本来の蛇神は鹿島の海にある甕であり磯であり、蛇神である磯良神ではないだろうか。その蛇神を睨むように建御雷神は、鹿島神宮に鎮座していると考えるのが普通であろう。

伊邪那美が火之迦具土神を産んで死んだのだが、その火之迦具土神の迦具は「カグ」で輝く意を持っている為か火の神とされているが別に、母親を殺した忌子ともされている。古代からの習俗に、鬼子を見分ける方法が伝わっている。生後1年の赤子に、一升餅を背負わせる方法だ。これは生れて1年の赤子は、一升餅を背負って歩けるわけがないという前提であった。過去に、一升餅を背負って歩いたのは、酒呑童子であり、茨城童子という鬼子であった事から、それらと同じ子を鬼子として間引きしたと云われる。つまり忌子であり鬼子は、両親から離されたのであった。

香香背男であり、天津甕星には何故「天」が付くのか。それが天孫族の一員であったなら、それは親に逆らった忌子でもあり鬼子でもあったのかもしれない。それ故に排除されたのが、香香背男であり天津甕星だったのか。聖武天皇時代に妙見信仰は、庶民が祀るのを御法度にされた。江戸時代になっても星の信仰は邪教とされたのは、太陽も月も無い夜というのは、星は輝いてはいるが、真っ暗な夜という事に加え、石川五右衛門が庚申の日生まれという事から、星の輝く夜というのは泥棒の暗躍する夜であるとされた。しかしそれは、それ以前から天津甕星という星の惡神の影響が無かったとは言えない。

古代に何があったのか、なかなか知る術は無いのだが、香香背男であり天津甕星が封じ込められたのだけは理解できる。その香香背男は神名に「男」が付けられている為に男神と思ってきた。しかし香香背男をカカセオとし「カカ」が蛇の古語とし、「セオ」を考えた場合、遠野の大蛇退治の伝説が頭を過った。

遠野の土淵に流れる小烏瀬川は、早池峯から転げ出した石が滝に落ちて、そこが小烏瀬川の滝となり、その川が小烏瀬川となったとの伝承がある。その小烏瀬川に、大蛇の舌出岩、大蛇の胴体である続石、そして大蛇の尾石の三分割に分かれて点在している。その大蛇の尾石がある地を現在は大樽という地名になってはいるが、どうも古くは大垂であったようだ。大垂は大きく垂れる意でもあり、大きく水が垂れ落ちる意でもあって滝の意にもなる。その大樽の地に鎮座する神社は、水破大明神を祀る神社となっているが、別当に聞いてみると本来は白龍神社であったそうな。小烏瀬川の瀬の尾に大蛇であり白龍の尾石を祀っている。流れの速い瀬は滝にも通じる事から、瀬の尾とは滝の意にもなるようだ。つまりカカセオのセオとは、滝の意でもあるよう。そこで思い出すのが二荒山の麓に祀られる滝尾神社だ。

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