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Channel: 不思議空間「遠野」 -「遠野物語」をwebせよ!-
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妖怪すねこすり

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ウィキペディアによれば、「すねこすり」とは、岡山県に伝わる妖怪の一種であると。人間の歩きを邪魔するとされる。」と書いている。その正体は、犬とも猫とも、また別の生き物ともされている。ただ"人間の歩きを邪魔する"というと、よく犬が人間にすり寄って歩く場合邪魔になるので、そのイメージもあるが、猫も人間に付いて歩かないものの、人間の歩きを邪魔にする場合が多々ある。岡山というと、以前何度か泊った事のある化野燐氏によれば、妖怪すねこすりの最古の記録は「現行全国妖怪辞典(1935年)」が初出とされる事から、文献では無く古くから口伝で岡山県に広まったものが、妖怪すねこすりなのだろうか。

化野燐氏とは以前、"妖怪土ころび"の正体の話をしたことがある。遠野の翁の体験に、山道を歩いていたら、上から"黒いモノ"が転がって来て目の前を通り過ぎ、下の沢へと転がって行ったと。すると、その正体は熊であったという話がある。土ころびの絵を見ても、一つ目以外は黒い毛に覆われているので、熊のイメージに近い。熊はよく、下りがヘタだと云われる様に、見た事は無いが、たまに転ぶらしい。そのイメージから土ころびが出来たのかもしれない。そういう意味では、すねこすりもまた身近な生き物がモデルになっていると思うのが普通だろう。丸まって寝ている猫の姿がすねこすりに似ているという人も多い。ただ、大きさをさて置けば、ヤマネの冬眠している姿もすねこすりのイメージに近いのかも。昔、初冬の遠野の山にクワガタ採集に行った時の事、朽木を見つけたので斧で割ったところ、中から奇妙な毛玉が出て来て、一瞬ドキッとした記憶がある。正体は、冬眠中のヤマネだった。まん丸の毛玉のヤマネは、そのままキーホルダーにしてみたいほどの大きさと、毛のフワフワ感が漂っていた。


ところで、何故に"脛こすり"なのだろうか?歩行の邪魔をするからという説明が、なんとなくしっくりこない。脛といえば、「親の脛をかじる」とか「弁慶の泣き所」の言葉が思い浮かぶ。調べると、「すね1本、腕1本」という言葉は、お金を稼ぐ部位であるらしく、足では無く何故か脛という言葉を使用したか気になる。だが「弁慶の泣き所」という意味から考えても、脛は急所であり弱点でもあるが、ある意味足の中でも"大事な個所"ともとれる。つまりお金を稼ぐのに必要な足の、更に大事な個所が脛なのだと理解できる。となれば、その大事な場所にすり寄って来るとは、人間の弱点を攻めに来る妖怪と云う認識で良いのだろうか。そういえば、猫嫌いで有名なフランスの思想家ボルテールは、猫を評してこう言っていた。「猫が足にすり寄って来るのは人間に対して親しみを持っているからではない。人間の足を利用して、単に自分の痒い場所を掻きに来ているだけだ!」と。つまりボルテールに言わせれば、猫は悪意を以て人間の脛(足)にすり寄って来る魔物に等しいようである。そういう意味では、妖怪すねこすりの正体は、猫に一票となってしまう。ただ、このボルテールの言葉も、猫を飼っている身としては納得するものである。確かに痒いところを掻こうとする面もあるが、ボルテールには猫に対する愛情が足りないから、そういうところだけしか見えてないという事だろう。まあともかく妖怪すねこすりだが、その正体はご自由にが正解なのかもしれない。

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