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Channel: 不思議空間「遠野」 -「遠野物語」をwebせよ!-
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「遠野物語拾遺247(捨子)」

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年廻りの悪い子は捨子にするとよい。まずその子に雪隠の踏張板の下を潜らせた後、道違いに行ってちょっと棄てる。始めから拾う人の申合せが出来ていて、待っていてすぐ拾ったのを、改めてその人から貰子をする。こういう子供には男なら捨吉、捨蔵、女の場合はお捨、おゆて、ゆてごなど、捨という名をつけることが多い。

                                                  「遠野物語拾遺247」

年廻りが悪いとは、親が厄年の時に生んだ子供であったり、丙午の時の子供であった場合を云う。その年廻りの悪い子を上の画像の雪隠の踏張板の下を潜らせるというものは、何度も書いて来たようにトイレとは、霊界の入り口であって、踏張板は、その境界の扉と考えた方が良いだろう。「今昔物語」にも紹介されている様に、セッチンであり厠であるトイレとは、人間が妖怪などに変化してしまう場所でもある事から"化粧室"とも呼ぶ。化けるのは、陰から陽であったり、その逆の場合もある。民間ではトイレに南天を置いて「難を転じる」願掛けをしたりする。またトイレは"黄金(糞尿)"の溜まる場所でもあるとされる為、お金が溜まるようトイレを綺麗にしなければならないとされるのも、陰から陽への変化を期待してのものである。ここでの年廻りの悪い子という陰の要素を陽に転換する為の、民間呪術であろう。

そして道違いに棄てるというのも、道違いは辻でもあり、雪隠と同様、現世と霊界との境界でもあると信じられていた。つまり捨子にするとは二度、霊界を潜らせるという意味になる。ただこれが、子供の為を想ってする呪術なのか、家や親の今後を良くする為の呪術なのかは定かでは無い。

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