
自分は、クラシックをじっくり聴く時は、部屋を暗くして聞く場合が多々ある。しかし今回は、布団に入って寝ながら聴くというだらしない格好をしてみたのだった。冒頭、低弦の音が響いている。ボリュームを低く設定していたので、よく聴き取れない。そこで、そこそこにボリュームを上げてみた。しかし、オーケストラ演奏の音楽は、ボリューム設定が難しい。ピアニッシモに合わせれば、フォルテッシモの時に大変になる。ただ、こういう音の強弱が胎児に刺激を与えるので、クラシックが胎教に良いと云われる所以だ。
冒頭の低弦は、ラヴェル「ボレロ」のむように同じメロディーを繰り返し演奏している。それが幾重にも結びついていき、クライマックスへと繋がるのだが、この響きが錯覚を呼び起こす。何と言うか、低弦の響きは重い響きではあるが、とても暖かく心地よい響きなのだ。そして先に書いたように、この曲を寝ながら聴いていたが、いつのまにか自分の体が浮遊し始めたかのように感じてしまう。いやこの時は実際に、体がフワ~ッと浮くような感じになった。
作曲家のグレツキは、ポーランドのアウシュビッツ収容所のある地で生まれたようだ。そして、この「悲歌のシンフォニー」で採用された詩は、アウシュビッツ収容所での少女の詩である事からも、恐らく魂の救済を意図したものだろうか。とにかく単純に表現すれば、体が浮遊し天国に召されていく感覚。実際、天国らしき場面では、美しいソプラノと、悲痛な叫びのような歌も交えていた。説明から想像するに恐らく、アウシュビッツ収容所で非業の死を遂げた少女の悲しみと、天国に召された安らぎが同居しているかのような音楽。
