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Channel: 不思議空間「遠野」 -「遠野物語」をwebせよ!-
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遠野不思議 第九百十三話「魔所(高室のソウジ)」

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村々には諸所に子供等が恐れて近寄らぬ場所がある。土淵村の竜ノ森もその一つである。ここには柵に結われた、たいそう古い栃の樹が数本あって、根元には鉄の鏃が無数に土に突き立てられている。鏃は古く、多くは赤く錆びついている。この森は昼でも暗くて薄気味が悪い。中を一筋の小川が流れていて、昔村の者、この川で岩魚に似た赤い魚を捕り、神様の祟りを受けたと言い伝えられている。この森に棲むものは蛇の類なども一切殺してはならぬといい、草花の様なものも決して採ってはならなかった。人もなるべく通らぬようにするが、余儀ない場合には栃の樹の方に向って拝み、神様の御機嫌に障らぬ様にせねばならぬ。先年死んだ村の某という女が生前と同じ姿でこの森にいたのを見たという若者もあった。また南沢のある老人は夜更けにこの森の傍を通ったら、森の中に見知らぬ態をした娘が二人でぼんやりと立っていたという。竜ノ森ばかりでなく、この他にも同じ様な魔所といわれる処がある。土淵村だけでも熊野ノ森の堀、横道の洞、大洞のお兼塚など少なくないし、また往来でも高室のソウジは恐れて人の通らぬ道である。

                         「遠野物語拾遺124」
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「高室のソウジ」は、現在の遠野たかむろ水光園から山口のデンデラ野方面へ続く草地の事を云う。ソウジとは「草地(そうち)」が転訛してソウジと呼ばれている。「遠野物語拾遺124」には「また往来でも高室のソウジは恐れて人の通らぬ道である。」と記されているが、何を恐れていたのかはわからない。ただ昭和50年代の後半、この高室のソウジで怪異が起きている。それは「現代遠野物語(不思議な女性)」で紹介している。普段でも車も人も通らない道。それが現代よりも更に古い時代は、それこそ獣くらいしか通らなかったろう。
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何やらムクドリが群れで高室のソウジに入り込み、何かを啄んでいるようだった。


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