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Channel: 不思議空間「遠野」 -「遠野物語」をwebせよ!-
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遠野不思議 第七百六十四話「近江弥右衛門の墓」

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佐比内暮坪部落にある、近江弥右衛門の墓。近江国高嶋郡村井村の出身で、天正年間阿曽沼時代の遠野に来て、間もなく佐比内に移住し金山開発や佐比内の開拓を行い、慶雲寺の再興を行うなど、県内の近江商人の祖と云われる。近江商人の東北への流れは、南北地用時代からと云われるが、それ以前に近江国の佐々木氏が東北へと進出してから基盤を築き、その後に近江商人が流れたとの説もある。近江氏も元々は佐々木氏であったか。この辺は、別の機会に書く事としよう。

近江弥右衛門の墓は、上郷町佐比内の暮坪にある。石碑の幅約六尺、高さ約九尺の大石で、中央に「近江弥右衛門の墓」とある。右側に文政十亥年、左側には三月二十五日肝与助長右衛門とあり、もちろん弥右衛門は天正年間の人間であるので、後世これを建てたもので、真の墓所は他にあると思われるが、言々句々で判明しない。ところが、近年その墓地附近にある家に病人が引き続き出来たので、困り果て法華とか八卦とかに聞いたところ、墓地の手入れをしないで荒れ次第に放って置いた為であるとの事なので、部落民は大正九年旧七月に手入れ掃除をして、盆には供養をする事にたという。現在では旧三月三日に祭事をする事にして居るという。


                                   「上閉伊今昔物語」

「上閉伊今昔物語」にあるように、この近江弥右衛門の墓を手入れしない時があり、地域で病人が相次いだとの事であるが、つまりいつしか近江弥右衛門はこの地域の神に昇格し、それを地域の人々も認めたという事であろう。日本の神々とは、そういうものである。

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