
画像は、続石側の泣石に木漏れ日が目の様に当たり、まるで妖怪ぬりかべの様に見えたものを採用。妖怪ぬりかべがいるかどうかはさて置いて、それを体験した人の話は聞いた事がある。真っ暗闇であったが、いつも通る道なので感覚で進んでいたが、壁の様なものにぶちあたり進めなかったことがあると。つまりその人物は、非日常と遭遇したと云う事になる。
なんというか、自分の住んでいる家は長年暮らしている事から、感覚でどこに何があるかわかるもの。例えば停電になったとしても、懐中電灯の置いている場所や、配電盤の位置などは目を瞑っても辿り着ける人は多いだろう。ところがその途中に、予期せぬものがあって進行を邪魔立てすれば、それは非日常との遭遇という事になる。
そういう意味では、去年の台風の後、土砂崩れが起き道が崩壊すれば、それは日常いつも歩いている道の行く手を塞ぐものとなる。ましてや道を塞いだものが画像の様な大岩であれば、まさに日常を遮る"妖怪ぬりかべ"になってしまう。
また結界の場合も、妖怪ぬりかべの様でもある。ここでいう結界は、家の囲いや外壁など。これらは、他人の侵入を防ぐ為の物理的結界でもある。いつもは無かった筈の隣の家の境界に、突如コンクリート塀などが作られたのなら、それは今までの日常からの逸脱でもある。

先年土淵村の村内に葬式があった夜のことである。権蔵という男が村の者と
四、五人連れで念仏に行く途中、急にあっと言って道から小川を飛び越えた。
どうしたのかと皆が尋ねると、俺は今黒いものに突きのめされた。一体あれ
は誰だと言ったが、他の者の眼には何も見えなかったということである。
「遠野物語拾遺163」
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この「遠野物語拾遺163」もまた、日常歩き慣れている道で、目に見えないものに突き飛ばされている。もしかしてこの話も、自ら見えないものにぶつかった表現を"突き飛ばされた"としているだけかもしれない。「遠野物語」および遠野界隈に、妖怪ぬりかべの話を聞いた事が無いが、唯一可能性が高いとしたら、この「遠野物語拾遺163」だろう。