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Channel: 不思議空間「遠野」 -「遠野物語」をwebせよ!-
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わが爪に魔が入りて

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わが爪に魔が入りてふりそそぎたる月光むらさきにかゞやき出でぬ

きら星のまたゝきに降る霜のかけら墓の石石は月光に照り

本堂の高座に説ける大等のひとみに映る黄なる薄明

                        宮沢賢治
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宮沢賢治が14歳の頃、旧制中学の先輩だった石川啄木「一握の砂」に触れ、文学に目覚めて歌を詠み始めた頃の歌だという。宮沢賢治は学生時代、寺に下宿して文学書や宗教書を読み漁り、夜には寺の本堂の縁側で月を観ながら物想いに耽っていたというが、学生時代は特に幻想的な面に魅かれる為、こういう歌を詠んだのかと思った。

ところで気になったのは「爪に魔が入りて」という表現だが、爪には"爪半月"という箇所がある。その爪半月が無いと不健康などという迷信の他に、その部分が黒ずむと、いつか死ぬという迷信を子供の頃に聞いた事がある。実際に子供の頃、爪に棘を刺した事があり、その部分が黒ずみ紫がかった見えた。もしかしてだが、"月の紫に輝く"と"爪(爪半月)の魔"をかけて死に結び付け、神秘的な表現にして遊んでいたのじゃなかろうか?表現的には、上田秋成「青頭巾」の最後の場面を彷彿させる。

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