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Channel: 不思議空間「遠野」 -「遠野物語」をwebせよ!-
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「遠野物語拾遺240(忌み嫌われる双子)」

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双児が生れた時には、その父親が屋根の上から近所に聞えるだけの大声で、俺あ嬶双児を生んだであと三辺喚ばわらなくてはならぬ。そうせぬと続け様に、また双児が生れるといわれている。

                                                    「遠野物語拾遺240」
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古代中国では、家族の者が死ぬと、生返って欲しい願いから家の屋根に上って、その人の名前を呼ぶ事を「魂呼ばい」と云う。これは、その魂が天に昇ったと考えられていた為に、声が魂に届く様に、より天に近付こうとした為でもあった。遠野地方に置き換えて考えて見ると、遠野での死んだ魂は山へと昇って行く。また、子供の生誕にも山神が関わってくる事から、屋根に上って叫ぶのは山神に対する訴えだと思われる。

「注釈遠野物語拾遺」によれば、一産一子が通常であるとした為に、双子以上は畜生腹といって嫌われたというのも、畜生類である犬や猫が一度に複数頭産む事に重ねたものだろう。山は、獣の生まれる場所であり、山神の使いに狼がいた事も付随していたか。

そして、双子というものは子供が半分に分れたものだと遠野地方では信じられていた。だから、その双子の能力も、通常の子供の半分しか無いものとされ、二人合わせて一人前。しかし、食べるのが倍となるので、双子が生まれて家は不幸になると云われたのは、現実的な要素も含まれていた。ただ、捨て子や間引き、そして世間に内緒で奥座敷に囲う場合もあったようだから、この双子の片割れも、遠野地方に座敷ワラシの原型に近いものであったのかもしれない。

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