
この前は「五位の光」としてゴイサギの怪異を書いたが、青鷺もまた昔の人間が怪異を感じた鳥であったようだ。靑鷺は警戒心が強く、少しでも近寄ろうものなら直ぐに飛び立ってしまう。ただ、真冬の寒い頃は川の畔でじっとしている事があるので、近くで撮影するなら真冬がいいだろう。また最近知ったのだが、遠野には「鷺の森」と呼ばれる場所があり、ある時期になると、その鷺の森でアオサギが群れをなして佇んでいるという。是非今年は、それを撮影してみたいものだ。

小松和彦「日本怪異妖怪大辞典」には、こう記されている。
「靑サギは夜間に光を放つ怪異となる。靑サギが飛ぶとその光は火の玉や月の様に光るという。また帯を後ろに締めて夜道を歩くと、青サギが入道となって後ろから覗き込むとも伝えられている。」
大型の鳥である鷺は、確かに夜に飛ぶ事もある。光が月の様だと捉えられているのは、その青白い体が月の光を受けて光っている様に感じるのではなかろうか。空を飛ぶ鳥は魂を運ぶ存在として、ヤマトタケルの逸話から伝わり知られている。つまり、あの世とこの世とを行き来する存在であると認識されている為、その死の匂いから怪異が生れたのだろう。これはカラスやフクロウも含める鳥全般に言えるのだろう。多くの種類の鳥が生息するが、どの鳥にも確かに怪異譚が付随しているのは、そのせいだろう。また鷺は養殖魚などを捕食する事から害鳥としても有名で、更に気性も激しい事から、こういう怪異を伴う不気味な話が作られたのだろう。