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Channel: 不思議空間「遠野」 -「遠野物語」をwebせよ!-
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遠野不思議 第九百六話「蓮池の乳神様」

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遠野市土淵町の常堅寺の裏手に、小烏瀬川の支流で足洗川の流れに河童淵と呼ばれる場所がある。その川のほとりに、小さな社が建っている。昭和50年に発行された菊池幹編「遠野路」というガイドブックでは河童神が祀られていると紹介されている。しかしそれは、戦後の高度成長期から観光ブームを呼び込もうとした影響もあったのか、観光向けに記された内容となっている。
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社の前に、河童の赤ん坊が母河童の乳を咥えた像が建っているが、これが本来の意味を持つ社である。
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社の内部には、乳首を象った赤と白の丸い布の袋を祀っている。これは綾織にある乳神のものと同じである。元々は、伊勢神宮の渡会氏の信仰する妙見信仰からきている。「伊勢参宮名所図会」という記録に、渡会氏の妙見信仰は乳の神として、地元および近郷の尊崇を集めていた。当初は、米を紙で包んでのもので、それに必ず12の穴を開けて、乳の出が良くなるように祈願したそうである。この12の穴はもしかして十二様であり、多産の神でもある山神と結びついたものであろうか?また別に、乳の出の良い御婦人は逆に、穴の開かない乳首を模ったものを奉納し、その余分な乳を妙見様に預かって貰う為に奉納したそうである。
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この伊勢神宮の妙見の信仰方法が、江戸時代に流行ったお伊勢参りにより、広まった様である。遠野からも多くの人達が、お伊勢参りをした。そのついでに得た妙見信仰が遠野に持ち込まれ、この様な形で信仰されていたという事であろう。


河童と結びついたのは、遠野の河童は赤い河童であり、赤子を意図している。またこの地は、常堅寺と共に語られる場所であると思う。常堅寺の境内には、河童狛犬と呼ばれる狛犬が十王堂の前に建っている。その十王堂の内部には、子供の玩具が奉納されているのがわかる。つまり常堅寺の十王堂とは、子供の罪を裁く場所である。子供の最大の罪とは、親よりも早く死ぬ事である。常堅寺には以前、ピラミッド状に多くの童子・童女の石碑がまとまって置かれていた。つまり水子に関する供養も多くなされたのが常堅寺でもあった。この常堅寺は今でこそ曹洞宗になっているが、それ以前は天台宗で星の宗教でもあった。妙見信仰が運ばれてきたのは天台宗時代の名残があったからであろう。

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