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Channel: 不思議空間「遠野」 -「遠野物語」をwebせよ!-
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遠野不思議 第八百九十八話「恐ろしい小豆洗」

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旅人が山道を歩いていると、どこからか「シャキ、シャキ…。」と、小豆を研いでいるような音がした。旅人は、その音のする方向に近寄ってみた。するとそこには、小豆があちこちに散らかっていたが、音はしなかった。不思議だと思っていると、一粒の小豆が動き出し、その場から逃げた。旅人は、その小豆の後を追いかけて行った。すると、どこかの墓地まで来た。夕暮れの迫る頃であったので、恐ろしくなり旅人は逃げた。すると今度は、その小豆が追いかけてきた。暫くして後ろを振り向くと、小豆は見えなくなっていた。旅人は気持ち悪くなり、目についた一軒の空き家に入った。すると再び、遠くから「シャキ、シャキ、シャキ…。」とアズキトギの音が近づいてきた。旅人は怖くなり、布団をかぶって寝た。アズキトギの音は益々近づいてきて、今度は家の戸を叩いたり蹴飛ばしたりした。旅人は、恐る恐る扉を開けて外を見ると、そこには目が百もあるアズキトギの化け物がいた。そして飛び掛かり、旅人は食べられて死んだ。翌朝、その辺りには小豆が転がっていて、食われた旅人の死骸があったそうである。



                            「遠野の昔話」
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この話は、土淵町柏崎の佐々木新之亟によるもの。これまで遠野でのアズキトギに関してわかっていたのは、小友町山谷のアズキトギの小川。また上郷町に小豆洗田と呼ばれる小川があり、ここでも「ザクリ、ザクリ…。」という響きを成す妖怪が棲んでいたと伝えられている。また「遠野物語拾遺123」には、体中に小豆を付けた得体の知れない化け物の話が紹介されているが、これもまたアズキトギなのであろうか?ところで画像は、竹原春泉「絵本百物語」からの「小豆洗」で、話の内容は殺された小僧の霊が小豆洗いになったとの事。全国にも名前を変え、多くの小豆洗いの話があるが、今回たまたま見つけた遠野の小豆洗いの化け物の話は、かなり稀有ではなかろうか。今まで、小豆洗い、小豆トギとは、音だけの怪異で、人畜無害な妖怪だろうか?などと思っていたが、今回の遠野の話では、人を食べてしまう。調べると、いくつかの地域で「小豆洗おか、人取って喰おか。」と歌いながら小豆を洗っていると伝わるが、その人を取って喰らう具体的な話が遠野に伝わっていたのは貴重だと思う。

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