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Channel: 不思議空間「遠野」 -「遠野物語」をwebせよ!-
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遠野にあるチベットの残存「猿と石(其の一)」

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遠野の北に聳える早池峯&薬師岳を源流とする猿ヶ石川がある。その猿ヶ石川の名の語源は、猟師が見間違ったと云う猿に似た石からだという。「猿か?石か?」という程、猿に似ていたという石は、今でも猿ヶ石川の源流にあると云う。しかし似た様な伝説は花巻にもあり、東和の辺りに、その様な石があるとも云われている。他にも猿という文字が付く豪族の名から猿ヶ石川という名が付けられた説もあるが、猿ヶ石川の語源の決定打には成り得ないようだ。ただ猿ヶ石川沿いの伝承を調べて気になる一つの石がある。

小出の地に、画像のような石がある。その地を現在は次郎石とも言うのだが、次郎さんがこの石に体をはめ込んだらピッタリと嵌ったので、その石を次郎石と言うようになり、その地を次郎石と呼ばれる様になったという。また次郎さんが大岩を背負ったら、その岩に体がめり込んで、今の形になってとも。他に、三女神の一人、石上山へ行く筈の女神が一人でそんな遠い山へ行きたくないとダダを捏ねたら、石から地蔵が抜け出て来て、その女神を石上山まで連れて行った。それからその石は"地蔵石"と呼ばれ、その石のある沢を地蔵沢と呼ぶようになったと云う。しかし、どれも取って付けた様な伝説である。

そしてもう一つある伝説には、この石から人が生れ、近くの集落に住み付くようになったという。この伝説と猿ヶ石川を足して考えた場合、ある一つのキャラクターが思い出される。そして、その名を孫悟空という。孫悟空は石猿と呼ばれ、石から生れた事とされているのが一般的に広まる伝説だ。

「西遊記」の孫悟空が生れた地は中国の蜀地方であるが、このような岩祖・猿祖伝説はチベットを中心として中国の蜀地方、東南部、インドシナ、インド・ビルマの国境地帯など、東アジアの広い地域に分布しているようだ。

日本人の遺伝子は、一番チベット人の遺伝子に近いと云われている。そのチベット人に伝わる神話は、猿と岩の魔女との結婚から生まれた6匹の猿、または人間であると云う。この岩猿伝説を有する部族はいくつかあるようだが、はっきりとした形で保持しているのはビルマ・チベット族のナガ族であると云う。先に紹介したように、猿と岩の魔女との結婚で猿と人が生れたと云うが、その岩の魔女のシンボルを割れ目のある石、つまり女陰石としている。そしてそれと共に、男性のシンボルを意味して棒状の石を祀る信仰があるのだと。遠野にも陰陽石として、例えば光明寺や程洞稲荷などに祀られ、また小さな稲荷の社にもいくつもそういう陰陽石を祀っているので、探せばもっと出てくるだろう。

例えば、綾織の3メートルにもなる立石の上部には太陽の刻印が成されている。これは、陽石を意味しているのだろう。

また、宮守の立石稲荷にある巨大な石は、別に「狐石」とも呼ばれるが、コンセイサマとしても呼ばれている陽石である。

この画像は達曽部で祀られている陰陽が合体した石だ。とにかく遠野だけでは無いが、こういう陰陽石を大事に祀る、もしくは元々石があった場所に神社を建てるなど、石を崇拝している文化が根付いているのが理解できるが、その信仰と文化がいつから遠野にもたらされたのかはわかってはいない。

ところで遠野の稲荷の社に、多くの陰陽石が祀られているのだが、稲荷神社の総本山は伏見稲荷となる。その伏見稲荷の創建は和銅年間(708年~715年)とされており、その創始者は秦伊呂具であった。「山城国風土記」に「…伊禰奈利生ひき。遂に社の名と為しき。」とあり、イナリとは「稲成り」であり、稲荷の語源とされている。しかし本来、伏見稲荷を祀る稲荷山は秦氏の祖霊信仰の墓所でもあったが、宇迦御魂命を勧請し無理に付会したとも伝えられている。つまり「稲成り」とは、秦氏による後付の誤魔化しであると云われている。

群馬県に多胡碑、正確には「多胡羊太夫の碑」があるが、これに関連するものに、江戸時代の肥前平戸藩主に松浦靜山の著に「甲子夜話」がある。その「甲子夜話」に「多胡羊太夫の碑の傍より先年石槨を掘りいだす。その内に古銅券あり。その標題の字このごとし。」とあり「INRI」と刻まれていたそうだが「JNRI」は「ユダヤ人の王ナザレスのイエス」を意味する。その「INRI」は宇迦御魂命を勧請した時に「稲成り」と付会させようとし「INRI」の間に、山の形を象った「A(アレフ)」を挟み「INARI(イナリ)」としたという説がある。ただ「A(アレフ)」は牛の角を象ったものであるとされるのが一般的である。

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