
遠野には梨の木平という地名が、今のところ分かっているだけで三か所ある。今回紹介するのは阿曽沼時代に建立されたという天台宗寺院である積善寺の後方、来内寄りにある梨木平。その梨木平を通って流れる沢を、梨木沢と呼ぶ。


積善寺は阿曽沼時代であるが、現在の鍋倉山に城を移転したのが16世紀後半であるから、積善寺の建立もその頃であろうか。ただ梨木平から東に少し下ったところが、始閣藤蔵が早池峯に金が採れる事を祈願した伊豆神社の地であり、梨木沢にかかる橋が小田越橋であり、地名も小田越となっている。遠野の小田越は別に、早池峯の登山口も小田越という事から、梨木平は積善寺よりも始閣藤蔵・伊豆神社との関係が深いのだろうか。他の梨木平の地に結び付くキーワードは不動明王と早池峯、もしくは九州からの移転者が関係する事から、もしかして本来の梨木平という地名は九州から移転してきた者によって運ばれて来た可能性もあるのかもしれない。